プールサイドの春一番
ここ最近仕事が忙しすぎたので、かなりの無気力状態になっていた。
どのくらい無気力かと言うと、靴下履くのも面倒で、小林さんにムツゴロウさんばりに「おーーーー!!!!よしよしよし!!!!おおおおお!!よおおおおおしよしよしよしよs」って励まされてやっと今日履く靴下を決められるレベルでやる気がなくなっていた。
何をするにも、「おーーーー!!!!よしよしよし!!!!おおおおお!!よおおおおおしよしよしよしよs」を求めたため、小林さんもよしよし疲れ状態になり、声は枯れ、テンションの急な上げ下げによるセルフ躁鬱状態になっていた。
このままだとお互い破滅するだけだと思い、とりあえず好きなことをしまくろうということで、昼に鰻を食べた後市民プールに行ってきました。
結論から言うと、プール最高だわ。
今の時代プールだわ。
もう、ここがあたしのホームだなって。やっぱりどんな生物も母なるプールに帰ってくんだなって思いました。
ただ、市民プールとか久しぶりすぎて緊張感がすごくて。
まず、水着入るのか問題と、独自の市民プールルールがあったらどうしよう問題があるんですよね。
この市民プールルールがやっかい。どこまで服着てくのかとかどこまで全裸でオッケーゾーンなのかあたしはわからない。
着替えるときはもちろん女性用の更衣室を使うんですけど、大抵女子更衣室の中の扉からプールに行けたりするんですよね。繋がってる扉ありますよね。
みんなタオルとか持って水着に着替えてそこから出てって、プールサイドの棚に私物を置いてプールをエンジョイするわけです。
行きは良い。
ここまでの流れは理解。
帰りよ。
あたしが行ったプールは、プールにつながる扉から更衣室に入るとすぐ横にシャワーがあって。
あっこれシャワー浴びてから更衣室戻ってねーって奴よね??って思って、そこでシャワー浴びたわけです。
次の瞬間気づいたよね。
もう一度、プールにつながる扉前を歩いて更衣室に戻らねばならないということを。
んんんーーー???我、裸ぞーーーー??仮にも女子なるぞーーー?
って思って、もうそこからどうしたらいいかわからなくて。
扉が開かなければ見えないし、「へへっ…試されてんのかな、行くしかないぜ!!!」って言う少年漫画の主人公と、「これってもしかして着替えこっちまで持ってくるやつだったのでは…ヤベェ」っていう常識ある淑女のあたしが心の中でバトりまくって身動きが取れない状態になっていた。
もう何もわからない。
扉を開けた瞬間、プール側に全裸のアラサーが晒されてしまうことは罪なのだろうか。
昔、自分の部屋で着替えていた男性が、カーテンが開いていたという理由で外から着替えが見えてしまい、通報されていた事件が頭をよぎった。
自宅ですらこの扱い。
いくらこの市民プールはあたしのホームだと思ったところで、あたしの私物ではない。市のものである。
市のものは市民のものである、つまりあたしのものだというジャイアニズムのもと、自分の裸を晒す自信もなかった。
こんなことを悩みすぎてシャワールームから出られなくなってしまったが、時間が経ってシャワールームから出た瞬間に人と出会ってしまって、「うわっこいつなんで全裸なん…?」ってなるのも怖くて、その状況を想像するとより心臓がドキドキしてきてしまった。
もう行くしかない。
局部を手で隠すべきか…?
いや、
あたし的には股間だけでなく、右乳首左乳首それぞれに敬意を払いたい。
しかし腕は2本。
守れるのは2人だけーーーーーーー。
自分の無力さを感じながら冷えた体にもう一度シャワーを浴びていたところ、良いアイデアが浮かんできた。
「局部を隠すのではなく、顔を隠せば誰の股間および乳首なのかわからないのでは?」
これだわ。
あと大急ぎで前を通れば、見られない可能性が高いのでは。
しかし、見られた時に全裸で走ってる人というイメージがつくのも恐ろしい。
考えすぎてわからなくなり、もう行ったれと。
結果顔を隠しながら、走りはせずにちょっと早歩きなんだなって人に見えるくらいの小走りで全裸で移動しました。
誰にも会わなかった。
誰にも会わなかっただけに、あたしは未だにあそこの扉の前の通り方がわからないままである。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥とはこの事である。
もし万が一、あたしが裸で走ってるところを人に見られたとしたら、次回以降何かしらの対策が打てたはずなのに。
今後このプールに通うことを決心したわけですが、一生の恥として今後も全裸小走りを貫き通すことを決めた3月なのでした。