迫りくるおじさんとの闘い
今、リアルタイムで闘っている。
2時間にも渡るミーティングを終え、化粧は剥げ、ボロボロのあたしは電車の中でこれを打っている。
(早速はてなブログのアプリを活用している。)
この時間になるとみんな疲れているのか、お疲れのサラリーマンたちがウトウトしはじめる。
そう、あたしの隣に座っているおじさんもその一人である。
おじさんの年齢は大体定年前くらいだろうか、ほのかに懐かしい香り(加齢臭)を漂わせながら、無邪気にいびきをかきはじめている。
おじさんは上半身が安定しないようで、左右に大きく揺れながら懐かしい香りを私におすそ分けしてくれる。
少しずつ、少しずつ、
おじさんは私側に倒れてきている。
懐かしい香り。
懐かしい…ゴホッ
あたしは実家にいるお父さんを思い出しながら、今年は家族で旅行に行きたいなと考えていたところ、おじさんは更に体をこちらに寄せてくる。
こいつ
枕を探している…
完全に体が求めちゃってる。
少なくともおじさんを中心に半径30センチ以内はそれらしいものがないことを寝ながらに理解したのか、その先を探そうとしている。
半径35センチ以内の距離感にいるあたしは少しの緊張感を覚えながらも、
やれやれ、好奇心旺盛な子だなとか思ってたら、無慈悲にもおじさんがそっ…と寄りかかってきた。
これはあれだな、恋人同士のやつだわ。
今はまだおじさんの先端だけが触れている状況だけど、
おじさんの先端ってなんだろう
まぁおじさんの先端が触れてるんだけど、これから本格的におじさんがあたしを枕にしてくることは想像できる。
先端だけで十分懐かしいし、何より普通に重たい。
自慢じゃないけどあたしの頭結構でかいし、自分のだけでかなり重たいのにおじさんの分もカバーするほどの甲斐性はあたしにはなかった。
自分の頭(5kg)+おじさんの頭(4kg)ってことを考えるとトータル9kgで、柴犬と大体同じくらいの重さになる。
更に言うとあたしの太ももは中型犬の胴体くらいの太さはあるので、下半身に中型犬、首より上に小型犬を飼っていると言っても過言ではない。なんの話だろう。
おじさんの馨しい香り(サンダルウッドにイランイランを混ぜてごま油も追加した感じの香り)に惑わされ、あたしはかなり混乱しはじめていた。
悪いなと思いながら、駅に到着するたび、あたしはそっと肩を上げてみた。
いやいや、嫌なわけではないんですけどね、ちょっと左のブラジャーが下がってるみたいで。
おじさんは、はっとしたようにすぐ体制を立て直す。
でも仕事で疲れているであろうおじさんは、またすぐに寄りかかってくる。
そしてあたしは肩をクイっと上げる。
はっと気づくおじさん。
寝る。肩クイ。
寝る。肩クイ。寝る。寝る。肩クイ。肩クイ。肩クイ。寝る。
コマンドなのか、おじさんとのセッションなのかわからないけど、20分くらいはこれを繰り返してあたしは目的の駅に着いた。
何も背負うもののなくなったあたしは自由の身になった。
でも今でもあいつのことを思い出すんだ。
サンダルウッドとイランイランとごま油の匂いを嗅ぐと、ね。
今日は帰って中華炒めにしたいと思います。